8月、9月と、それぞれ1回ずつイベントで演奏する機会をいただいている。
こうして声をかけてもらえるのはありがたい。そしてイベントが決まるたびに、「今回は何か新しい曲をやりたい」と思う。
ところが、いざセットリストを考え始めると、結局いつも似たような曲が並んでしまう。
弾ける曲がないわけではない。
工工四を見ながらなら弾ける曲、家で一人ならそれなりに弾き歌いできる曲は、もっとたくさんある。しかし、「人前で披露する」となると話は別だ。
そこで改めて感じるのが、「暗譜している曲」と「持ち歌」の間には、かなり大きな距離があるということだ。
暗譜はできても、まだ持ち歌ではない
曲によっては、暗譜するだけならそれほど時間はかからない。
三線の旋律が歌のメロディラインとほぼ同じだったり、特徴的なフレーズが繰り返されたりする曲なら、集中して取り組めば1時間ほどで工工四を見ずに弾けるようになることもある。
もちろん、歌詞の暗唱まで含めればもう少し時間は必要だが、「覚える」という段階だけなら、意外と早い曲もある。
問題は、その先だ。
暗譜したからといって、その曲をすぐ人前で演奏できるわけではない。
自分にとっての「持ち歌」とは、
ほぼ間違わず、人前でも楽しんで演奏できる曲。
ここまで持っていくのには、かなり長い時間がかかる。
家で弾けることと、人前で弾けること
一人で練習しているときには問題なく弾ける。
ところが、人前に出ると突然歌詞が飛ぶ。いつもなら間違えないところで指を外す。出だしの音が不安定になったり、知らないうちにテンポが速くなったりする。
何度経験しても、人前で演奏する緊張感は独特だ。
だから、持ち歌にするためには、家での練習だけでは足りないのだと思う。
実際に人前で演奏する。緊張しながら最後まで歌う。失敗したところを練習して、また人前で演奏する。
そんな経験を何度も重ねて、ようやく、
「この曲なら、もう大丈夫かな」
と思えるようになる。
そして、そこまで来て初めて「持ち歌になった」という感覚が生まれる。
プロの唄者は持ち歌が三桁
民謡酒場などでライブをしているプロの唄者になると、持ち歌は三桁に及ぶと聞く。
お客さんからのリクエストに応え、その場の雰囲気を見ながら曲を選び、何曲も続けて演奏する。そのためには、単に「弾いたことがある」という程度では到底足りない。
100曲、200曲という曲が、必要なときにいつでも取り出せる状態で身体の中に入っているのだろう。
そう考えると、本当にすごい。
では、自分はどうか。
数えてみれば、「これは持ち歌です」と言える曲は、せいぜい30曲に満たない。
それでも、三線を始めた頃を考えれば、ずいぶん増えた。
サークルで「持ち歌」に育てる
自分の持ち歌が増えてきたのは、サークルでみんなと練習したり、イベントや公演で演奏したりする機会があったからだと思う。
特に、サークルでの練習は大きい。
新しく覚えた曲を、まずみんなと弾いてみる。
一人では問題なく弾けていたのに、みんなと合わせるとテンポが揺れたり、歌詞が一瞬出てこなくなったりすることもある。
それでも何度も一緒に弾き歌いしているうちに、意識しなくても指が動き、自然に歌詞が出てくるようになる。
家で覚えた曲が、サークルで繰り返し演奏することで、少しずつ身体に馴染んでいく。
考えてみれば、自分にとってサークルは、一人での練習と本番との間にある場所なのだと思う。
間違えてもいい。歌詞が飛んでもいい。
みんなと何度も演奏しながら曲を身体に入れ、ある程度自信がついたらイベントや公演で披露する。
本番でうまくいかなかったところがあれば、また練習する。そして次の機会にもう一度演奏する。
そうしたことを繰り返しているうちに、最初は「間違えずに最後まで弾く」ことで精いっぱいだった曲にも、少しずつ余裕が生まれてくる。
周りの音を聴ける。お客さんの顔を見ることができる。そして何より、自分自身がその曲を歌い、三線を弾くことを楽しめる。
そこまで来て、ようやく持ち歌になる。
一曲ずつ、持ち歌を増やしていく
8月、9月のイベントも、おそらくいつものおなじみの曲が中心になるだろう。
新しい曲をやりたいという気持ちはある。でも、人前で披露する以上、「とりあえず弾けるから」というだけでセットリストに加える気にはなれない。
だから、焦らず一曲ずつ増やしていけばいい。
新しい曲を覚える。
一人で繰り返し練習する。
サークルのみんなと何度も弾き歌いする。
そして自信がついてきたら、人前で演奏する。
一曲が持ち歌になるまでには時間がかかる。
だからこそ、その一曲には、自分が練習した時間だけではなく、一緒に演奏した仲間との時間や、本番で緊張した経験まで積み重なっている。
そう考えると、持ち歌とは単に「覚えている曲」の数ではないのだと思う。
何度も弾き、何度も歌い、みんなと合わせ、人前でも演奏しながら、自分の中に馴染んでいった曲。
今はまだ30曲に満たない。
それを30曲、40曲、そしていつか50曲へ。
プロの唄者の三桁には遠く及ばなくても、自分が安心して、そして楽しんで人前で歌える曲を、これからも一曲ずつ増やしていきたい。
「弾ける曲」を増やすだけではなく、「持ち歌」を一曲ずつ育てていく。
サークルのみんなと楽しみながら、ぼちぼち増やしていこうと思う。